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「占いなんて信じてなかった――タロットが教えてくれた“別れ”の意味」

占い

別れに迷った夜、導かれるように引いたタロットの一枚

その意味は私の心をそっと救ってくれた。

恋に悩むあなたへ。

「別れの夜、偶然目にした“占い”の文字」

「……ごめん。もう、無理かもしれない」

スマホ越しに聞こえた彼の声は、いつもよりずっと遠くて、冷たかった。

――無理って、何が?


――あんなに一緒に未来を話したのに。

玄関先で固まったまま、私は言葉を返せなかった。


何も言えずに通話が切れ、部屋の中はすっと音を失った。

時刻は22時をまわっていた。


外に出たくて仕方なかった。


息苦しくなる部屋を飛び出して、ただ歩いた。

いつもの駅前。


ふと視線を上げたとき、目に飛び込んできたのは、ぼんやり光るネオンサイン。

「タロット占い」

急に心臓がドクンと鳴った。


普段なら絶対に立ち止まらない。


でも今夜だけは“何か”に導かれているような気がした。

ほんの少しの勇気と、ほんの少しの希望を握りしめて

私はそのブースのカーテンを、そっと開いた。

「カーテンの向こう側にいた“彼女”」

「いらっしゃい」

その声は、思ったよりも静かで、やさしかった。


派手な衣装でも、妙な演出でもなく、目の前にいたのは淡い紫のスカーフを巻いた女性。

年齢は40代くらいに見えた。

私は黙って頷くと、指定された椅子に座った。

小さなテーブルに、何枚かのカードと水晶のようなものが置かれている。

「お名前は?」

「……ミナです」

名前を口に出すのが少し恥ずかしかった。


けれど彼女は、それだけで私の何かを見透かしたように、ふっと目を細めた。

「今日は何か迷ってる?」

――迷ってる?


そんなの、迷ってるどころじゃない。私は今日、大切な人を失った。

「……彼に、別れを告げられました」

声が震えた。話しながら涙がにじむ。


だけど、彼女は何も言わずに私の言葉を受け止めてくれた。

そしてゆっくりとカードをシャッフルし始めた。

「じゃあ……今の“あなたの心”を見てみよう」

「“恋人(逆位置)”が示した真実」

彼女の手が静かに止まり、1枚のカードが私の前に置かれた。

――「恋人(逆位置)」

私はその文字を見て、思わず息を飲んだ。

「これは、決断に迷いがあるときによく出るカード。でもね……」

彼女はカードに指を添えたまま、私の目をじっと見た。

「“誰かの心が離れてしまった”とも、“自分の本音にフタをしている”とも読めるの」

胸がズキンとした。


彼との最後のやりとりが、まざまざと思い出された。

――あのとき、私は本当に彼のことを思っていた?


――それとも、自分がひとりになるのが怖かっただけ?

「ミナさん……別れを“終わり”にするか、“意味ある出来事”にするかは、あなた次第よ」

その言葉は、どんな慰めよりも深く、温かかった。


タロットが教えてくれたのは、未来の予言ではなく、「今の自分」と向き合う覚悟だった。

「“占い”が映したのは、私の中の声だった」

帰り道、私は彼女の言葉を何度も思い出していた。

「自分の本音にフタをしている」

あの一言が、ずっと胸に引っかかっていた。


心のどこかで気づいていた。

彼との関係は、いつからか“幸せ”じゃなく、“依存”に変わっていたのだと。

家に着いても、部屋は同じだった。

でも、見える景色は少し違っていた。

机の上に置かれたコーヒーカップ。


二人分並べていたマグのうち、もう一つを引き出しにしまった。

私は泣きながら、タロットカードの意味を調べ始めた。


「恋人(逆位置)」――別れ、葛藤、選択。

そしてもう一つ書かれていたのは、
“本当の意味での再出発”

占いは、私に未来を約束してくれるものじゃない。


でも、確かに今の私の心を映していた。それだけで、少しだけ前を向けた気がした。

「あの日からの“答え”が、少しだけ見えた朝」

翌朝、目が覚めたとき、不思議と涙は出なかった。

窓の外にはやわらかな朝の光。


カーテン越しに差し込む陽だまりの中で、私は小さく息をついた。

タロット占いの結果が“答え”だったわけじゃない。


でも――あの夜、自分の心と向き合えたことが、何よりの“救い”だった。

ベッドの上でスマホを見つめながら、ふと思い出した言葉。

「別れを終わりにするか、意味ある出来事にするかは、あなた次第」

その瞬間、私は画面に一言だけメッセージを打った。

「ありがとう」

それは彼へのものではなく、
自分の弱さを認めて、また立ち上がろうとしている“今の私”への言葉だった。

「占いは、“未来を当てる”ためじゃなく、“今”に気づくためにある」

あの夜の出来事を、私はきっとずっと忘れない。

別れの痛みは、今も時々心をかすめる。


けれど、あの占いがなければ――私は本当の意味で立ち止まることができなかった。

占いは「当たる」「当たらない」だけじゃない。

心の奥にある違和感や迷いを、カードや星の形を借りて言葉にしてくれるもの。


だからこそ、それは「信じる・信じない」ではなく、「気づく・向き合う」ための道具なのだ。

そして気づいたのは、
“運命は変えられないものではなく、自分の手で書き換えられる余白がある”ということ。

その第一歩が、あの一枚のタロットカードだった――。

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